アリワークで使うアリ針ってどんな針?について
アリワーク刺繍で使用する針なので通称「アリ針」と呼んでいますが、正確に言うと「アリワーク刺繍用のかぎ針」になるのでしょうか。(アリワークについてはこちらの記事にて)
日本ではほとんど流通していません。
というのも、日本では生産されておらず輸入品になるというのと、そもそもあまり需要がないので商売にならないのだと思う。
同じ刺繍用のかぎ針でも、フランスのリュネビル用のかぎ針とも違います。
(ビーズが通れば代用することも可能ですが、ここで説明しているアリ針とは違うということです)
勤め先経由でインドの刺繍工場から直接手に入れることができ、何本も試めせたのは恵まれていたなと思う。
最近では個人的に輸入して国内で販売していたり、海外のサイトから直接購入することもできるようになったので、以前に比べるとだいぶ手に入れやすくなったと思いますが、それにはある程度のアリ針の知識が必要な気がします。
アリ針を手に入れる際のちょっとした手助けになればいいなと思い、アリ針についてシェアしたいと思います。
もくじ
●アリ針のざっくりした種類について
まずは、構造の違いで2タイプあると思う。
・木の柄のタイプ
このタイプは針が木の柄に刺さっているという構造のため、針の太さが均一で布通りがよい。
つまり刺し心地がよいのです。
デメリットは耐久性がやや低め。
細くて長い針の場合には特に木の柄からカギ針が抜けてしまうことが多く、一度抜けてしまうと直してもまた抜ける…という具合で諦めるしかなくなります。また、長さがあるとしなりやすく無理に刺し続けると曲がってしまうので要注意です。
・針と柄が一体型のタイプ
このタイプは針がそのまま延長されて柄になっているため、抜ける心配がなく安定感があります。
つまり耐久性があり、長持ちしやすいってことですね。
通常は柄に糸が巻かれた状態で売られています。
デメリットはだんだん太くなる構造なので、刺し心地という点では木の柄に比べて劣ります。
針の太さにばらつきが多く、カギの大きさが一緒でも針の太さがかなり違っていたりと個体差があるので、選ぶ時には注意が必要です。
柄に巻かれた糸がほどけてきてイライラする…というのもあるかもしれません(笑)
またクセのある刺し方を繰り返すと、耐久性のある一体型でも金属疲労で折れてしまうというケースもあります。
次に、針の長さについて2タイプ
・針が細くて長いタイプ
ビーズやスパンコールの止めつけに向いています。長さがあるのでビーズやスパンを貯めておくことができて便利ですが、糸刺繍の場合には曲がりやすいので向いていません。
・針が短いタイプ
糸刺繍に向いています。カギが大きくてしっかりしたものが多く安定感があります。
ビーズが通れば刺すことはできますが、貯めることはできません。
以上、ざっくりと4つ挙げてみましたが…
アリ針調達においてやっかいなのが「番手がない」ことだと思う。
つまり太さやカギの大きさが数値化されておらず、1本1本が微妙に違っていて「細め」か「太め」というざっくりした種類分けしかないのです。
いわゆる1本1本がハンドメイド…ということだからでしょうか(;’∀’)
選ぶ側としてはちょっと困るのですが、職人はたくさんの針から使うものを選んでいるから、それが成立しているのだと思う。
(需要が限られていて企業が商品化するには条件が悪い前提がまずはあるんですけどね。)
なので、そもそも「1本だけ買う」という発想のものではないと思われます。
有難いことに工場から取り寄せた100本くらいの中からえりすぐりを選べたため、1本1本に違いがある…つまり「アタリ」「ハズレ」があることを実感することができました。
実際使ってみないと正確には判断できませんが、見た目でカギの部分が甘いと糸が外れやすく「ハズレ」だと大体予想がつきます。
逆に「アタリ」は糸が針から外れることがなく刺し進みやすいということですが、生地の厚さとか糸の種類などの条件で使いやすさは変わるため、これが「アタリ」と言い切るのはかなり難しい。
使い手の習熟度でも「アタリ」の差はかなり出てくると思われます。
とにかく歴然とした「個体差」があるのです。
購入する際は、売り手が見極めてセレクトしたものを1本売りしている以外は、5本とか10本とかを一気に買ってしまう方が失敗するリスクが低くなります。
●最初に手に入れるのはどのタイプを選ぶか?
これからアリワークを始める場合、慣れるまでは手に力が入ってしまい、おそらく針を曲げてしまう恐れがあります。
曲がった針に慣れてしまうと変なクセがついてしまい、スムーズに刺し進む妨げになるため避けた方が無難。
慣れるまでは、耐久性のある針と柄が一体型がおすすめです。
まずは2本揃えるのがおすすめ。
針と柄が一体型で針は短めでしっかりしたものを1本。
針と柄が一体型でビーズが通る針を1本。
この2本があれば、当面は十分じゃないかと思います。
実は「針と柄が一体型で針は短め、しっかりしているけどビーズも通る針」というのが手に入れば、最初の1本として理想的なのですが…
この条件を満たす針は、まとまった数の針の中から選ばないと見つけることができない「超アタリ」なレアケースになるため、2本揃えるのが妥当だと思う。
●アリ針の代用について?
他の針に比べるとだいぶ手に入れにくい針のため、代用してアリワークにトライしたいというケースもあるかもしれません。
ビーズが通るカギ針であれば代用できなくもないですが、刺繍の内容に制約があると思う。
参考までに2タイプのカギ状の針との比較についてふれておきます。
●リュネビルの針との違い
同じ刺繍用のカギ針ですが、まずは構造が違っています。
リュネビル用のカギ針は、針と柄が別々になっておりネジで柄に針を装着する仕様。
さらに針にビーズを通す必要がないので、アリ針ほどカギの部分が小さくなくてよいというがある。
リュネビルの針の方が、日本のメーカー「クロバー」などからも発売されているので手に入れやすいとは思いますが…
似ていてもそれぞれの専用の針には構造や太さに理由があるように思うので、初めから代用するのは微妙かなと思ったりします。(リュネビル針を代用してとりあえずアリワークを覚え始めるとか)
ただ、木の柄から抜けてしまったアリ針をリュネビルの柄に装着することができるので、捨ててしまうのがもったいない場合にはリュネビルの柄を利用されても良いのかもしれません。
とはいえ、柄がアリ針に比べると太いため、使用感はかなり違ってくると思います。
●レース針の代用
アリ針の代用案として、レース針の一番細い番手を使用できると聞いたことがあります。
YouTubeのインドのアリワーク動画でも編み物用と思われるカギ針で刺している様子をみたことがあるのでNGではないんだろうな…と思うのですが、アリ針に比べると刺し心地がかなり悪いのと布も選ぶ気がします。
そして、繊細な刺繍をするのはかなり難しいと思う。
何故かというと、カギの先端の部分が違っているから。
アリ針の先端のとんがりは縫い針と同じように鋭くなっていますが、レース針の先端は針先のようにとがらせていないので細かく針を落とすのが難しい気がするのと、生地を突き抜ける時に力技になるのではないかと思われます。
もう10年くらい前になりますが、日本在住のインド人女性にヒンディー語を習っていたことがあって、アリ針を普通に買えるものなのかを現地のご親戚の方に聞いてもらったところ、
「クロッシェ針ならあるよ。」と写メを送ってくれたのですが、それはレース針でした。
インドでのアリ針事情はわからないのですが、一般的には知られていないのかな…と思いました。
どうしてもアリ針がない場合には、ビーズが通るレース針で代用でも良いのかもしれませんが、作業効率が悪く、出来る刺繍が限られてしまう気がします。
●アリ針の保管とか
アリ針は素材が鉄なため、ちょっと気を遣わないと錆びてしまう恐れがあります。
錆び対策としてはオイルを塗るとか、錆びてしまった場合には研磨する(カギの部分を研磨すると角度が変わってしまうのであまりおススメできませんが…)というのがありますが、
一番の対策は「いつも使うこと」なのだと思います。
使う頻度の多い針は錆びずに長持ちしやすい傾向があるように思う。
逆に死蔵してしまっている針は劣化が進みやすくて、見た目錆びていなくても腐食しているのか針通りが悪く感じます。
なので、たくさんアリ針を所有するのはあまり意味がないかも…なんて思うのですが、実はけっこうな本数を持っているんですけどね(;^_^A
海外サイトで興味本位に買ったのもあって、正直、ほとんどを使っていません。
使う針って限られてくるので、必要な針って5本あるかないかくらいだったりします。
その保管もわざわざ革で職人風のケースを作ってみたりしたのですが、結局、アリ針の長さにちょうどよいチョコレートの箱に使いやすいのだけバラにして入れたりして…かなり適当な管理で済ませていたな…とふと思う(;’∀’)
今回の内容をまとめると…
「アリ針は他の針で代用せず、針と柄が一体型のタイプを2本、錆びないように常用するのがおすすめ」ってことになるのでしょうか。
もう少しアリ針のマニアな話はまた次の機会にて^^