刺繍を習得することについて思うこと
刺繍が好きで、刺繍を扱う会社に勤められたのは本当に恵まれていたと思う。
なにより実践的なスキルが身に着くので、与えられた課題をこなすだけでは得られない機会を得られたことが私にとっては何よりも代えがたいものでした。
…といっても、
「刺繍を覚えながらお給料をもらえる」というのは魅力的に聞こえるかもしれませんが、どちらかというと結果論で、お給料をもらう部分は違う仕事をしっかりやっていたという面が大きかったというのが実際のところ。
「習得」できたのは「仕事」だったからというわけでもない。ただ、「仕事」だったのは習得には有利ではあったのは確か。
海外に長年住んでいても、現地の言葉が流暢になるわけでもないというのに似ているように思う。
生活に不自由ない程度で片言レベルなのか、口論できるくらいにマスターできるのかは、当人の「意図」というか「意志」が大きいと思う。
そこには「意図」の他にも「好奇心」や「向学心」、仕事を通してなら「労働の対価」についての価値観みたいなものが関わってくると思う。
何度か「刺繍の仕事」がしたいと相談されることがありましたが、「タダ同然だったら無くもないかもね」と言ってみると、「報酬がないのであればちょっと…」と返されることが多かったように思う。
「タダ働き」とか「丁稚奉公」とか…昭和な感じで今となっては死語ですが、「労働の対価には「経験」が含まれる」とか「先行投資」といった考え方で私自身は刺繍を習得した気がします。
ただ、これはやはり旧世代的な考え方なのかもしれませんね。
超情報社会になった今は、独自に経験値を高めることは可能となったようにも思わなくない。
諸々、思うところはありますが、「刺繍の習得いついて」ふり返ってみたいと思います。
刺繍を習得するには、まず「刺し方」を覚えるというのと、「反復」と「応用」で経験値を増やして「使いこなせる」ようになるという2つのフェーズがあると思う。
「刺し方を覚える」のは独学でも可能ですが、月謝を払って「習う」のが効率が良い。
単純に与えられた課題をこなすだけで、刺し方自体は覚えられるのです。
どちらかというと「使いこなせる」というフェーズからが本番。ここからは、習得する上で「意志」と「環境」が重要になってくる気がします。
そして「好きでたまらないと何度も繰り返してしまう」という行動パターンから「情熱」というのも加えておきたいところです。
私の場合、仕事を通して「反復」と「応用」ができ、経験値を上げる機会に恵まれ、そこに「向学心」と「情熱」も加わって相乗効果も得られたように思う。
とはいえ、就業時間内に経験値を上げれたわけでもなく…全体の仕事量から考えると刺繍するのはプライベートな時間にならざる負えなかったのですが、それはあまり気になりませんでした。
ただ、熱量は少しずつ下がり落ち着いてくるのが自然の摂理。
「どんどん覚える」から「覚えたものを押し広げる」に移行して今に至るという感じ…
ここで習得の流れを整理してみると
①刺し方を覚える
②刺し方を反復して定着させる
③材料やテクニックのバリエーションを覚える
④覚えたものを違った形で使ってみる
こんな流れになると思う。
①と②が「フェーズ1」,③と④が「フェーズ2」ということになる。
これらの1つ1つを、掘り下げてビーズ刺繍習得のガイドラインを作れるといいなと思っています。
なにせ、時代は「令和」なんですから…