カギ針の刺繍(アリワーク)とぬい針の刺繍の違いについて語ります。
アリワークとはカギ針を使った刺繍ですが、刺繍といえば刺繍針を含む縫い針で行うのが一般的だと思うので、その違いについてを語ってみたいと思います。
※このブログでは、カギ針のアリワークに対して、便宜上縫い針を使った刺繍をニードルワークと呼ぶことにします。本来「ニードルワーク」ってもっと広い意味だったりするかもしれませんが、ここでは狭義的な感じで。
では、アリワークとニードルワークの刺繍の違いについて話していきたいと思います。
この2つの大きな違いは使用する針。(アリワークはカギ針、ニードルワークは縫い針や刺繍針)
針の違いで玉止めから刺し方まで違ってきます。
楽器でいうとピアノとフルートくらい違っています。
この例えの場合、鍵盤を叩けばすぐ音がでるピアノが「ニードルワーク」で、ただ吹いてもまともな音を出すことが難しいフルートが「アリワーク」というイメージ。
また、それぞれの刺し方でほぼ仕上がりが同じに見えるものもあれば、どちらかだけでしか刺せないテクニックや見え方がある。
私的には同じ仕上がりになるのであれば、迷わずアリワークを選んでしまう。
というのも、作業が早くできるとかいう以前に、カギ針には針穴は無く糸をひっかけるだけで始められるので、針穴に糸を通す必要がないから(;’∀’)
枠に生地を張るよりも針穴に糸を通す方が面倒だと思ってしまうズボラな理由なんです…(;^_^A
ビーズやスパンコールを刺すにあたってそれぞれのメリットとデメリットをあげるとしたら…
- アリワーク
メリット:早く均一に刺せる。仕上がりがよい(既製品と同じに仕上げることができる)
針に糸を通す必要がない。
デメリット:習得に時間がかかる。
枠に張った状態など一定の環境を作る必要がある。持ち運びに不向き - ニードルワーク
メリット:習得しやすい。持ち運び易い
デメリット:仕上がりの個人差が出やすい
慣れていても作業時間がかかる
針穴に糸を通す作業がある
とりあえずザックリいうと、アリワークの刺繍はフラットな刺繍に向いていて、一方、ニードルワークは高さのある刺繍が得意だと思う。
フラットな…というのは、ビーズやスパンコールが連続でライン上に連なっている、または敷き詰められている状態。
世の中のビーズ刺繍の多くはフラットな状態のものがほとんどだと思います。↓こんな感じ
なので、アリワークだと早くしっかり止めつけられるため、ある意味、有利だとは思いますが、ニードルワークでも出来上がりの見え方はほぼ同じに刺すことができるので、どちらでもかまわないと言える部分ではある。
では、アリワークでないとできないテクニックを私が知る範囲であげてみると…(ニードルワークでもできなくないけど、圧倒的にアリワークが有利なものも含めています)
- とにかく細かいチェーンステッチ
- 生地の篝(かがり)
※ニードルワークだとボタンホールステッチが近いですが、速さと仕上がりは断然、アリワークの方が上だと思います - 網目模様のステッチ
- アップリケや部分的な生地の差し替え
- チュールやリボンをフリル状に止付け
まぁ、こんな感じですが、また思いついた毎に増やしていこうと思います。
上に挙げたこれらのテクニックは、どれも刺繍のメインとなるテクニックではなくて、ビーズやスパンコールの刺繍にプラスするとより特別感のある刺繍になるという位置づけかな…と思います。(出来るようになるとかなり刺繍の表現の幅が広がりますが…)
つまり、アリワークができないからといって、豪華なビーズやスパンコールの刺繍ができないわけではありません。
そして、ニードルワークでないとできない刺繍というもあり、知っている範囲でそれらを挙げておくと…(アリワークでもできなくないけど、圧倒的にニードルワークが有利なものも含めています)
- フレンチノットやリングステッチ、ブリオンローズなどの糸刺繍のテクニック
- モール(金属をコイル状にした材料)を使った刺繍(例外有)
- パディング(詰め物)をして高さを出した刺繍(主にモール、刺繍糸の刺繍)
- ビーズやスパンコールをたくさん通して高さを出した刺繍
- フリンジ
どれも立体的になる豪華な刺繍をする時に便利なテクニックだと思います。
なので、実は立体的な豪華な刺繍はむしろニードルワークの方が向いていたりします。
冒頭の写真(下にも貼っておきます)は土台の白い部分のみアリワークのチェーンステッチで埋めていますが、図案はすべてニードルワークで刺されています。ニードルワークなのでサテンステッチがふっくら仕上がっていますね。
アリワークだとミシンのステッチのように生地の上を這うように刺していくイメージで、生地の面から浮くような刺繍には向いていないのです。
アリワークで刺した豪華な刺繍というのは、立体的というよりは一面刺し埋め尽くされているとか圧倒的な刺繍量で仕上がっているものがほとんどだと思う。
勤め先のビーズ刺繍の商品のほとんどがアリワークとニードルワークが併用されています。
どちらか一方で仕上げるというよりも、二つの技法の良さを組み合わせて効率よく使いこなすとより複雑で洗練された豪華な刺繍ができるのです。←ここ一番伝えたいコト
アリワークとニードルワークが併用されてます。
一見レース地に刺繍してあるように見えますが、実は無地のチュール地に刺繍しているのが驚き。
リボン花やふわふわした毛糸の花、フリンジはニードルワークで、その他はアリワークが使われています。
両方マスターするとビーズ刺繍を存分に楽しむことができるってことですね。
アリワークの刺繍が広まってほしいという思いからこのブログを始めましたが、道具の調達が難しく、習得に時間がかかるアリワークにチャレンジする前に、ニードルワークでビーズ刺繍を楽しむというのが私的にはおすすめです。
そんなコンテンツを増やしていけたらいいなーと思ったりしています^^