アリワークで使う刺繍枠、比較と考察。今までの経緯と今の結論。

アリワークを始めた25年ほど前、刺繍枠は職人と同じものを、インドのアトリエから取り寄せて使用していました。
職人が使う枠は、一番小さいサイズでも洋裁の半身が入るくらいの大きさがあり、かなり大掛かり。(↑写真参照)
もちろん、しっかり張れるので刺繍の仕上がりは良いのですが、1回張るのに、慣れても30分ほどかかりました。
専門の道具なので、手軽さがないのは仕方ありません。実は、スタッフだけでなく、会社が運営する刺繍教室の生徒さんまで職人と同じ枠を使用することになっていました。
クラスでは枠に生地を張って準備し、ご自宅にも同じ枠を用意していただく。
そんな形態が、3年ほど続いたように思います。
大きな枠を使いこなすのは本当に大変で、配送した木枠を一度も使わずに終わってしまった……というケースも、何度か耳にしました。
横棒と縦棒の4本を組み合わせるだけのシンプルな構造ですが、組み立てる最中も、組み立てた後もスペースが必要です。一般家庭で使う目的で作られているわけではないので、そもそも無理があるようにも思えました。
通常は、ウマと呼ばれるテーブルの脚のような台を2台使い、その上に枠を乗せて使用します。アリ枠自体も高額でしたが、さらにウマを揃える必要があり、始めるにはスペースだけでなく、経費もかなりかかります。
海外の技術が上陸したての頃は、まあ致し方ないのか…、それでも、いち早くトライされた方にとっては、貴重な体験だったのではなかったかと、当時も今も思う。
習得するには、まだ環境が整っていなかった初期の頃だった、ということですね。
その後、持ち運びができる木枠の需要が高まり、オリジナルの木枠が作られるようになりました。
それと並行して、私自身もいろいろな枠の代用を試したり、市販されている刺繍枠を試したりと、試行錯誤を繰り返してきました。
今回は、そのまとめをしておきたいと思います。
ここからは、他の刺繍枠との比較のため、職人が使うアリワークの枠を「アリ枠」と呼びます。
もくじ
日本刺繍の刺繍枠

日本刺繍の枠は、アリ枠に構造が似ています。釘で固定し、テンションをかなり高く張ることができます。
サイズ感としては、アリ枠の半分弱くらい。ギリギリ持ち運びも可能です。
日本の道具は、やはり抜群に質が良いです。用途に合わせてきちんと設計されているのは、この枠も職人用の道具だからなのだと思います。
申し分のない枠なのは間違いありません。
ただ、私としては「手数を減らしたい」という思いがあったので、少し求めていたものとは違っていました。
張るのに手間がかかること。
アリ枠よりは小さいものの、やはりある程度のスペースが必要なこと。
そして、反物の幅に合わせて設計されているため、生地の幅に制約がある点も、汎用性という意味では少し気になりました。
油絵のフレームパーツ
キャンバスを張る前の木

油絵のフレームパーツは、当時の私が求めていた「手軽で簡易的に使えるもの」に近い存在でした。
サイズもいろいろあり、価格も安価です。
最初は、生地を固定するために画鋲を使っていました。
ただ、均一に張れないことと、画鋲の頭に糸が引っかかることがあり、使用感はいまひとつ。
結局、錐で穴を開けて、凧糸で引っ張り、テンションを保つ方法に落ち着きました。
糸で引っ張るというのは、枠張りでは鉄板。しっかり生地を張るためには、間違いのない方法だと思います。
4辺すべてでなくても、最後の1辺だけを糸で引っ張るだけで、わりとしっかり張れたりします。
デメリットとしては、サイズが調整できないため、大きさごとに枠が増えてしまうことでしょうか。
数百円とリーズナブルなこともあり、気づけばどんどん増えてしまい、管理が大変になった記憶があります。
数年間、木片がボロボロになるまで使い倒しましたが、だいぶ前に断捨離で全て処分してしまいました。
スクロールフレーム

主にクロスステッチ用として流通している
スクロールフレームは、アリ枠や日本刺繍の枠に構造が似ていますが、それらに比べると手軽さがあり、さらに横棒に生地を巻きながら作業ができる木枠です。
ネジで固定するため、均一にテンションを保ちやすく、刺繍の仕上がりも良いです。
長い間、愛用していました。
オリジナルの使い方では、左右の生地端を引っ張る仕様ではないのですが、そのままだと張りが足りないため、左右の短い棒にテープ状の紐をかけて引っ張り、テンションを高めました。
デメリットは、テーブルに固定しにくい点です。
クランプではしっかり固定できず、私は重しを枠の上に置いて、動かないようにしていました。
この枠もかなり愛用して、最終的にネジの根元の木が裂けるまで使い倒しました。
プラスチック刺繍フレーム

アメリカ製の樹脂素材の枠を使用していました。
最近では、中国、韓国製などの類似品が流通しているようです。
サイズ変更ができるように、パーツがシリーズ化されています。
当時の生徒さんが海外で見つけて、教えてくれました。
軽量で、使い勝手が良いです。
樹脂なので安価。
デメリットはいくつかありますが、いずれも対策をすれば、あまり大きな問題にはならないと感じています。
まず、パーツが丸いため、Cクランプで固定しづらいです。
そのため、重しを置いて使うことになります。
また、生地は押さえのパーツで固定する仕組みなので、糸で引っ張るわけではありません。
そのため、テンションが不安定になりやすく、途中で引っ張り直す必要が出てくることがあります。
緩みやすさは、使用感に大きく関わります。
そこで、1辺だけ押さえのパーツを使わず、凧糸で引っ張るようにすると、だいぶ安定します。
また、サイズを変えていくうちに、パーツがどんどん増えてしまうという点もあります。
とはいえ、この点はメリットでもあります。
図案に合わせてサイズを柔軟に変えられるのは、かなり便利です。
卓上の樹脂製の枠

刺している様子を撮影する必要があり、中国系ECサイトで見つけた卓上の刺繍枠を試してみました。
安価だったので、正直あまり期待していませんでしたが、これがなかなかの優れもの。
どれくらい耐久性があるかはまだわかりませんが、ここ1年はかなり使い回せています。
今現在、愛用中の枠です。
上下で2サイズ使用でき、軽量で扱いやすい。
最も気に入っている点は、枠で挟むだけなのに、オーガンジー1枚でもしっかり張れて、その状態を保てること。
デメリットもあります。
まず、一番最初にセットする際、ネジがとにかく入れにくい。
一旦セットできれば、何度も繰り返す作業ではないのですが、最初は「不良品なんじゃないか?」と思ってしまうかもしれません。
そして、軽いこと。
これは手軽さというメリットでもありますが、刺繍をするには、ある程度の重量感があった方が刺しやすいです。
そのため、動かないように工夫が必要になります。
私は洋裁用の文鎮などを重しとして使っています。
または、枠から脚を外してバラし、Cクランプで固定することもできます。
さらに、一般的なテーブルだと、枠の位置が若干高く感じるかもしれません。
その場合は、椅子にクッションを置くなどして調整することになります。
最後に、大きな作品は作れません。
大きな作品の場合、私は前出のプラスチックフレームを使っています。
この枠についてインスタグラムでも投稿しております。
どの枠にも、メリットとデメリットがある
ここまで使ってきて、どの枠にもメリットとデメリットがあったなぁと思います。
そして、ここまで読んで「丸枠が出てこない」と不思議に思われた方もいるかもしれません。
刺繍枠といえば、丸枠を連想する方も多いと思います。
それくらい広く世の中に行き渡っている道具ですが、私はアリワークにはあまり向いていないと感じています。

丸枠は、生地を張りやすい手軽さがあります。
ただ、緩みやすい。
また、バイアス方向に引っ張ることになるため、枠の跡が残りやすい点も個人的には気になります。
そもそも丸枠は、アリワークで必要な「パンパンに張る」という使い方を想定して作られているわけではないのではないか、と感じています。
さらに、丸い形なのでテーブルに固定しにくく、不安定なまま刺すことになりがちです。
そんなこともあり、手持ちの丸枠は、今ではほぼ使っていません。
まとめ
結論としては、アリワークでは「しっかり張れること」と「作業中に枠が動かないこと」がとても大切です。
職人用のアリ枠はもちろん理想的ですが、一般家庭で気軽に使うには、やはりハードルが高い道具です。
今のところ、手軽さと扱いやすさのバランスで考えると、卓上の樹脂製の枠が私の現在地です。
ただし、大きな作品にはプラスチックフレームを使うなど、作品のサイズや目的に合わせて使い分けるのが現実的だと思っています。
アリワークの枠選びは、正解がひとつではありません。
スキルの習熟度、作りたいもの、作業スペース、続けやすさを考えて、
自分にとって無理のない枠を選び、工夫しながら付き合っていくのが一番だと思っています。




